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One of Tadao Ando’s Masterpieces: Architecture Tour in Central Kyoto(English Guide)
TIME'S
京都 | 三条
世界的建築家、安藤忠雄。“建築界のノーベル賞”と名高い「プリツカー賞」に輝いた、日本を代表する建築家です。京都のド真ん中に建つ「TIME’S」は、その代表作。長らく閉鎖されていた名建築が、ついに建築ツアーで開かれます。こんなに川スレスレの建築はなぜできた?安藤さんが言う「どれが味方になるかを探す」とは?安藤建築に潜む“京都コード”。そして、世界的建築家の名が棟札に刻まれた非公開エリアまで。建築好きなら誰もが憧れる名作中の名作を、全身で体感してください。
建築プロフィール

●Ⅰ期1984年/Ⅱ期1991年竣工
●名称:TIME’S
●設計:安藤忠雄(安藤忠雄建築研究所)
1. 世界的建築家・安藤忠雄、名作中の名作へ
いまや、世界各地で美術館や公共建築を手がける安藤忠雄さんですが、その原点であり真骨頂、世界に羽ばたくきっかけとなったのが、住宅や小規模な商業建築です。自らを「都市ゲリラ」と称した安藤さんは、既成概念を打ち破る斬新な建築で、都市の隙間に新たな人の集まる場をつくりだしました。なかでも、この「TIME’S」は京都随一といえる繁華街のド真ん中、そのアクセスのしやすさと、街に与えた影響は類を見ません。
ところが、コロナ禍の影響もあり5年以上にわたって閉鎖。長らく内部に入ることができず、“開かずの名作”としてヴェールに包まれてきました。

2026年、このTIME’Sが再び動き出します。建築文化の発信拠点として「京都建築センター」が誕生し、いま、その扉をひらくスペシャルツアーが始まります。
なぜ、この建築は「名作中の名作」と評価されるのでしょうか。鍵を握る“京都コード”を読み解きつつ、足を踏み入れてみましょう。
2. モダンな安藤建築の“京都コード”を解読せよ
TIME’Sは、一見すると安藤忠雄さんらしい端正でモダンな建築です。しかし、この建築には、京都という都市が長い時をかけて育んできた空間の作法、いわば“京都コード”が随所に織り込まれています。
実は若いころ、京都や奈良を見てまわっていたという安藤さん。なぜTIME’Sは、こんなにも複雑で豊かな空間を持っているのでしょうか。川、町家、路地という3つの視点から紐解いていきましょう。
CODE1:川 「川」を庭として、建築に取り込む

この建築を語るうえで欠かせないのが「川」の存在です。
安藤さんはこう語ります。
「敷地を見た時、どれが味方になるかを探すことはとても大切です」
この敷地で選ばれた“味方”こそが、すぐ隣を流れる高瀬川でした。かつて高瀬川は、京都の物流を支えた重要な運河。しかし、近代にはその役割を終え、都市の裏側へと後退していきます。そこで安藤さんは、その見方を反転させて、建築のオモテへ持ち出したのです。これが画期的でした。
水面スレスレまで降りるテラス、あえて設けられていない柵。行政から大反対を受けながらも、粘り強く交渉して実現させたといいます。建物に迫って流れる水面を、この建築にとっての「庭」に。安藤さんは、日本の上質な住宅建築はほとんど庭を中心に空間構成が展開されている、だから、商業建築のなかにも庭を活かしてみたいと語っています。

「京都は庭だと若い時から感じていましたから、ここでも高瀬川を庭に見立てようと考えました。庭は季節や時刻によって見事に変化して、いつ行っても違う表情があって面白い。水を感じる庭をつくりたいと考えたのです」
京都はもともと川と近い都市ですが、それでも建物のすぐ脇を流れる水辺を、ここまで積極的に取り込んだ現代建築は他にありません。自然と境界がない建築。都市のウラとなっていた高瀬川をオモテに引き上げ、まちの風景そのものを変えてしまったのです。
CODE2:町家 複雑な光の濃淡、「町家」の再解釈

もう一つの鍵は「町家」です。京都の町家は、間口が狭く奥行きが深い構成を持ち、坪庭によって光と風を取り込んできました。かつて三条通には、そうした町家が密集していました。
同じように奥行きが深いTIME’Sにも、その空間の作法が潜んでいます。奥方向に連続する部屋、通り庭のような通路。奥へ進むと現れる、小さな中庭。

安藤さんは、町家が培ってきた知恵を再解釈したのかもしれません。直射光と反射光が交錯し、壁によって視線が遮られ、空間が連続しながら変化していく……。歩いてみると、複雑な光の濃淡から、コンクリートでできたモダンな町家を体感できます。
CODE3:路地 なぜ迷う?「路地」という立体空間の謎

京都といえば、町を縫うようにひしめく無数の路地。いまでは少しずつ失われつつある京都の景観、安藤さんはTIME’Sのなかに“路地”を出現させることを構想します。
そこからの行動が、衝撃的です。
「頼まれもしないのに設計をして模型をつくり、TIME’Sが竣工した翌年に、南隣の地主に模型を見せ提案しました」
安藤さんらしい型破りな提案がなんと現実となり、生まれたのがTIME’SⅡです。

その結果、TIME’Sのなかにオモテの三条通からウラへと抜ける“路地”が誕生。しかも折れ曲がる通路、突然現れる抜け、上下に移動する階段やスロープ……。一般的な路地は、ふつう水平方向にだけ伸びていきますが、このTIME’Sでは上がったり下がったり、立体的な“路地”が展開されています。まるで迷路のような、複雑で豊かな空間が広がります。

さらに魅力的なのが、増築による自作との対話です。
現地で一緒に、どこからが増築部分か探してみましょう。Ⅰ期とⅡ期では、壁に使われているコンクリートブロックの目地サイズが違います。ヴォールト屋根が水平的に伸びるTIME’SⅠ。頭ひとつ高い3階にドーム状の屋根が乗る、垂直的で求心的なTIME’SⅡ。すでにあった建築とどう対峙し、それをどう引き立たせるのか。増築を好む安藤さんならではの、自作との格闘を体感してください。

安藤さんは当初、路地もあれば、美術館や画廊も並び、現代的な京都らしい景観が広がるTIME’Sをイメージしていました。
2026年夏、この地にミュージアムやライブラリーを持つ「京都建築センター」が誕生します。安藤さんのイメージが、いま現実になろうとしています。

京都初の安藤建築、TIME’S
この建築は、安藤さんが京都で初めて手がけた作品といいます。彼が考えていたのは、形を真似ることではなく、「精神風土をどう受け継ぐか」でした。川・町家・路地——京都の空間の本質を読み取り、それを現代建築として再構成したもの。それが《TIME’S》であり、「名作中の名作」と評価される所以です。
3. 非公開エリア特別案内、幻の棟札も!?

この建築ツアーでは、特別に通常非公開の3階エリアへも潜入します。TIME’Sは、外観からは想像できないほど、フロアごとに異なる空間性をもっています。安藤さんは、画一化を避け、階によって個性を出そうと考えたのです。1階は川と一体化した空間、2階はまちと接続した顔となるフロア、そして3階は……。答えは現地に行けば一目瞭然、ぜひ体験してください。
そしてドーム屋根の裏には、目を凝らすと、なんと世界的建築家の名が刻まれた棟札が。普段は見ることのできない、名建築誕生時の記憶を、現地で目撃できる貴重な機会です。

この建築ツアーを監修した、建築史家の笠原一人先生は、こう語ります。
「絵画や彫刻は移動できますが、建築は、わたしたちが赴かなければ体験できません。安藤さんが、周囲の自然を取り込んだり、敷地の制約を受けたりしながら設計するように、周りの環境や歴史と切っても切れないのが、建築です。」
まちの風景そのものを変えてしまった画期的な名作、TIME’S。都市の見方を更新した、世界的建築家・安藤忠雄さんの代表作へ。実際にその場所に身を置き、全身で堪能してください。
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・参考文献
『安藤忠雄 建築を語る』(東京大学出版会、1999)
『安藤忠雄の建築 3』(TOTO出版、2008)
『現代の建築家 安藤忠雄 2』(鹿島出版会、1990)
『京都 近現代建築ものがたり』(平凡社、2021)
開催概要・申し込み
Highlights
・Discover one of Tadao Ando’s key early works in central Kyoto
What’s Included
・Enter normally restricted areas of TIME’S not open to general visitors
Know Before You Go
・Maximum 10 guests per tour — book early to secure your spot